2025 年後半，Windows 11 バージョン 24H2 および 25H2 において，初回ログオン後に UI が機能しなくなる重大な問題が報告されています。Microsoft は KB5072911 で公式に注意喚起を出しており，企業環境や仮想デスクトップで特に発生しやすいとされています。
本記事では原因と症状，回避策を整理します。
問題の概要
Microsoft の公式ドキュメント（KB5072911）では以下のように説明されています。
Explorer, the Start menu, and other XAML-dependent apps might not start or may close unexpectedly on some enterprise devices after first sign-in.
（初回サインイン後、一部の企業デバイスで Explorer や Start メニュー、その他の XAML 依存アプリが起動しない・突然終了する可能性がある）
さらに，非永続 OS や VDI 環境ではログオンごとに問題が再発する可能性がある点が強調されています。
This issue is more likely to occur on non-persistent OS environments or when devices are provisioned using updated images.
（非永続 OS 環境や更新済みイメージでプロビジョニングしたデバイスで発生しやすい）
発生する症状
Microsoft は KB5072911 内で次の症状を列挙しています。
- Explorer.exe が起動しない、またはクラッシュする
- スタート メニューが開かない / タスクバーが表示されない
- Settings（設定）が起動しない
- StartMenuExperienceHost や ShellHost.exe が異常終了する
- 真っ黒なデスクトップで何も操作できない
公式引用：
StartMenuExperienceHost.exe, ShellHost.exe, or related components may crash or fail to initialize.
UI の基盤である XAML パッケージの初期化が OS 起動に追いつかないため，シェルが構成できず，OS が「操作不能に近い状態」になるのがポイントです。
技術的な原因
KB5072911 では明確な理由が記述されています。
Some XAML-based components might not be registered in time during first sign-in.
つまり，更新された Windows イメージをもとにユーザープロファイルを初期作成する際
- MicrosoftWindows.Client.CBS
- Microsoft.UI.Xaml.CBS
- MicrosoftWindows.Client.Core
などの AppX パッケージ登録が遅延し，シェル起動より後になる
→ 必要な UI コンポーネントが読めずにクラッシュ，という因果構造です。
VDI や非永続 OS は毎回 “初回ログオン相当” の処理を行うため，発生頻度が極めて高くなります。
影響を受けやすい環境
| 環境 | リスク |
|---|---|
| 新規セットアップ直後（初回ログオン） | 高 |
| VDI／非永続 OS | 非常に高 |
| 更新イメージを使った大量展開 | 高 |
| 通常利用の個人 PC | 発生可能性はある |
Microsoft も次のように注意しています。
More likely to occur in enterprise deployments or VDI where provisioning happens frequently.
回避策（暫定）
Microsoft は KB5072911 にて，XAML 依存パッケージの再登録を推奨しています。
引用：
Re-register the following AppX packages if the issue occurs.
管理者 PowerShell で以下を実行
Add-AppxPackage -Register -Path "C:\Windows\SystemApps\MicrosoftWindows.Client.CBS_cw5n1h2txyewy\AppXManifest.xml" -DisableDevelopmentMode
Add-AppxPackage -Register -Path "C:\Windows\SystemApps\Microsoft.UI.Xaml.CBS_8wekyb3d8bbwe\AppXManifest.xml" -DisableDevelopmentMode
Add-AppxPackage -Register -Path "C:\Windows\SystemApps\MicrosoftWindows.Client.Core_cw5n1h2txyewy\AppXManifest.xml" -DisableDevelopmentModeその後 SiHost.exe の再起動 または再起動を行うと UI が復旧するケースが多いとされています。
VDI ではログオンスクリプトで自動化するのが現実的です。
まとめ
- 24H2/25H2 の更新後，初回ログオン時に Windows シェルが壊れて起動不能になる不具合が発生している
- 原因は UI パッケージ（XAML 系）の登録タイミング遅延
- 企業・VDI・大量展開環境で発生しやすい
- 暫定的には AppX 再登録で回避可能
- Microsoft は完全修正パッチを準備中とされ，運用現場ではアップデート保留や段階展開が必要
Windows の根幹である Shell が起動不能になるため，企業環境では影響が大きく，特に展開スケジュールには注意が必要です。
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