中小企業が狙われる「ID管理」の穴。IAM・IGA・PAMの違いとMicrosoft Entra PIMによる鉄壁の守り

「うちは中小企業だから、高度なセキュリティなんてまだ早い」
そう考えている企業こそ,今,サイバー攻撃者の格好の標的になっています。

特に狙われるのは,権限の強すぎる「管理者アカウント」です。
本記事では,中小企業のIT担当者や経営者が最低限知っておくべきID管理の3要素(IAM/IGA/PAM)と,Microsoft 365環境で最強の防壁となる「Microsoft Entra PIM」の導入メリットを実務目線で徹底解説します。

目次

なぜ今,中小企業に「高度なID管理」が必要なのか?

かつてのセキュリティは「社内ネットワークを守る(境界型防御)」だけで済みました。しかし,クラウド利用が当たり前の今,「ID(アカウント)こそが新しい境界線」です。

中小企業でよくある「危険な状態」:

  • 権限の私物化: 10年前から同じ人がずっと「全体管理者」権限を持っている。
  • ゾンビアカウント: 退職した社員のアカウントが,実はまだ消されずに残っている。
  • パスワード頼み: 多要素認証(MFA)が面倒で,一部の役員が設定をオフにしている。

これらを解決するのが,IAM・IGA・PAMという3つの概念です。

図解でわかる!IAM・IGA・PAMの役割と違い

これらは別々のものではなく、「セキュリティの深さ」を表しています。

概念名称役割(一言で言うと)中小企業での具体例
IAMIdentity & Access Management玄関の鍵社員にIDを配り,ログインを許可する
IGAIdentity Governance & Administration入居者の管理名簿異動や退職に合わせて,鍵を適切に回収する
PAMPrivileged Access Management金庫の鍵の管理サーバー設定などの「強い権限」を厳重に守る

中小企業がまず目指すべきは「PAM」の導入

多くの中小企業は「IAM(ログイン管理)」まではできています。しかし,最も被害が大きいのは「管理者権限の乗っ取り」です。これを防ぐPAMこそが,今の時代の最優先事項です。

Microsoft Entra PIM:管理者権限を「必要な時だけ」に

Microsoft 365環境でPAMを実現する機能が,Microsoft Entra PIM(Privileged Identity Management)です。

これまでの運用は「常に管理者」でしたが,PIMを導入すると「使う時だけ申請して管理者になる」運用に変わります。

  • JIT(Just-In-Time)アクセス: 必要な時(例:設定作業の2時間だけ)に権限を有効化。
  • 承認フロー: 上長の承認がないと権限が使えないように制限。
  • 証跡管理: 「誰が,いつ,何の目的で」管理者権限を使ったかログが残る。

【重要】プランとコストの現実的な選び方

中小企業の定番プラン「Microsoft 365 Business Premium」だけでは,実はPIM(PAM機能)は使えません。

ライセンス構成の正解

結論から言うと,「Business Premium」に「Entra ID P2」をアドオンするのが最も賢い選択です。

プラン構成PIM(PAM)IGA(棚卸し)向いている企業
Business Premium 単体××10名以下の小規模・リスク低
+ Entra ID P2(推奨)セキュリティを強化したい中小企業
+ Entra Suiteネットワークを含めゼロトラスト化したい

概算コスト(120名規模の場合)

  • 追加費用: 約1,350円(1ユーザー/月)
  • 合計: 約162,000円 / 月(年間 約1,944,000円)

※注:PIMやアクセスレビューの恩恵を受ける全ユーザーにライセンスを割り当てることがMicrosoftの規約上必要となるため,全社導入を前提とした試算です。

導入のロードマップ:3つのステップ

一気に進めると現場が混乱します。以下の順序で進めるのが実務的です。

STEP1:IAMの強化(今すぐ)
まずはBusiness Premiumの機能をフル活用し,全ユーザーの多要素認証(MFA)を必須化します。

STEP2:PAMの導入(本番)
Entra ID P2を契約し,IT担当者の「常時管理者」を廃止。PIMによる有効期限付きの権限付与に切り替えます。

STEP3:IGAの運用(定着)
「アクセスレビュー」機能を使い、3ヶ月に1回、外部共有フォルダや特殊なアプリ権限が放置されていないか自動チェックします。

    まとめ

    • IAM(認証)はセキュリティの第一歩。
    • PAM(特権保護)は、会社を倒産リスク(情報漏洩)から守るための要。
    • Microsoft Entra PIMを使えば、高度なPAMを安価に、かつノーコードで導入できる。

    「うちは大丈夫」という過信が最も危険です。まずは自社の管理者アカウントが「常に有効」になっていないか,今すぐ確認してみてください。

    参照情報・公式ドキュメント

    本記事で解説した機能やライセンスの最新情報は,以下のMicrosoft公式サイトもあわせてご確認ください。

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