2025年6月の Windows Update に含まれる KB5060533(Windows 10 向け累積更新プログラム)により,一部の環境で 深刻な不具合 が報告されています。この記事では,実際に確認されている事象,再現条件,回避・対処法についてまとめました。
2025年7月10日現在,各メーカーの対応が出揃いました。
富士通製PCに関しては修理については言及はありませんが,BIOSの配信以降の情報更新はありません。
また,Microsoftは本件について,2025年6月18日の不具合認定以降,言及していません。
発生している不具合
富士通製Windows10でロゴ画面でフリーズ
富士通社製および富士通クライアントコンピューティング社製のWindows 10のデスクトップパソコンを起動しようとすると,アップデートを適用した直後ではなく,数回の再起動を経たタイミングで不具合が発生するケースが報告されています。
具体的には,PCの起動時に富士通のロゴ画面でフリーズし,BIOS画面へのアクセスすら不可能となる現象です。ストレージやUSBデバイスにも一切アクセスできず,ユーザーによる復旧が困難な状態に陥ります。
2015年から2017年に発売されたデスクトップパソコンで現象が発生するとのこと。
対策BIOSの配信に関するリリースがでましたが,すでに症状が発生しているPCを復旧するものではない点に注意が必要です。
EPSONとは異なり,症状が発生しているPCの修理については言及はありません。
富士通のリリース(2025年06月30日更新)
2015年から2018年に販売した当社製デスクトップパソコン・PCワークステーションの一部機種において、6月11日に公開のWindows Update後にパソコンが起動できなくなる(FUJITSUロゴ画面から進まない)場合がある事が判明しました。6月13日以降、一時的に該当のWindows Update配信を停止いたしました。
2025年6月に実施されたOSの定例アップデートによる影響を受け、今回の事象に陥る可能性があることが判明しました。本状況に伴い、最新BIOSを当社Webサイトにて公開させていただきますので、ご使用製品への適用をお願いいたします。
現時点で問題が起きると確認された機種は以下のとおりです。
対象機種※公開予定のBIOSは問題の発生を抑えるもので、既に問題が発生したものを復旧させるものではありません。
問題が発生するWindows Updateの更新プログラム
- Microsoft Windows(KB5060533)のセキュリティ更新プログラム Windows 10 バージョン 22H2・21H2用
- Microsoft Windows(KB5060531)のセキュリティ更新プログラム Windows 10 バージョン 1809用
- Microsoft Windows(KB5061010)のセキュリティ更新プログラム Windows 10 バージョン 1607用
- Microsoft Windows(KB5060998)のセキュリティ更新プログラム Windows 10 バージョン 1507用
Microsoft Update カタログから更新プログラムをダウンロードし、手動でインストールした場合も今回の問題は発生しますので、上記の対象機種では行わないでください。
富士通株式会社公式
マウスコンピュータでロゴで停止,自動修復で停止
こちらは富士通製と異なり,BIOS起動までは可能な様子です。そのため,公式が配布する対策Biosへのフラッシュで回復が可能。
マウスコンピュータのリリース(2025年6月20日更新)
2025年6月中旬に公開されたWindows Updateを適用後、一部のノートPC製品において、
OSが正常に起動しない不具合が確認されております。【主な症状】
・弊社ロゴ画面から先に進まない
・『自動修復を準備しています』の画面で停止する【原因】
・システム構成とWindowsUpdateの整合性に起因する問題と考えております。【対応方針】
・対象製品のBIOSを更新することで不具合の解消を確認しております。
・更新用のBIOSは順次公開してまいります
・本件に関するお問い合わせは、下記お問い合わせ窓口へご連絡ください。以下モデルにて、OS起動不可の症状が出ている製品への対策Biosをご用意いたしました。
マウスコンピュータ:Windows Update 後、一部ノートPCにてOS起動不可トラブルにつきまして
■対象製品
【更新用BIOS公開済】
mouse A5
mouse B5
mouse F7
mouse K5
mouse K7
G-Tune E4
G-Tune E5
G-Tune P5
G-Tune P7
DAIV 4N
DAIV 5N
DAIV S4
DAIV R6
MousePro C4
MousePro G4
MousePro L5
上記以外のモデルで本現象の報告はございません。
EPSON ロゴで停止,自動修復で停止
EPSONも更新による症状をリリースしました。内容はマウスコンピュータに似ていますが,こちらは修理窓口への連絡が必要です。
EPSONのリリース(2025年6月24日更新)
一部のPCにおいて、Windows Updateにて2025年6月の更新プログラムを適用後、OSが起動しなくなる事象が確認されております。
なお、現在は対象となる更新プログラムの配信は停止しております。
【対象PC】
Endeavor NA710E
Endeavor NA711E【発生する事象】
電源投入後、「EPSON」ロゴが表示されるが、それ以上先に進まない。
「自動修復を準備しています」と表示されたまま先に進まない。現在、対策版のUEFIの準備を進めております。
UEFIを適用するまでの間は、Windows Update を控えていただきますようお願いいたします。
なお、当該現象が発生してしまったPCにつきましては、修理にてUEFIの修正をおこなわせていただきます。
(UEFIの修正につきましては、無償にて対応いたします)
お手数をおかけしますが、弊社修理受付窓口までご連絡いただきますようお願い申し上げます。
EPSON:Windows Update 後、OSが起動しなくなる事象について
原因と再現条件
海外の専門家による詳細な技術分析
今回の問題について,海外の技術系ブログでは詳細な技術分析が公開されています。オーストリアのIT研究者であるグンナー・ハスリンガー(Gunnar Haslinger)氏は,自身のブログで次のように指摘しています。
2025年6月にMicrosoftが配信したWindows 10向け累積更新プログラム「KB5060533」には,Secure Bootの「DBX(Forbidden Signature Database)」の更新が含まれており,これがトラブルの一因と考えられています。
数回の再起動後に発生する異常
この更新は,UEFIファームウェアが起動時に読み込む構造となっているため,アップデートを適用した直後ではなく,数回の再起動を経たタイミングで不具合が発生するケースが報告されています。
具体的には,PCの起動時に富士通のロゴ画面でフリーズし,BIOS画面へのアクセスすら不可能となる現象です。ストレージやUSBデバイスにも一切アクセスできず,ユーザーによる復旧が困難な状態に陥ります。
特定のマザーボードで顕在化する問題
この不具合は,富士通製の「D3410-B」など,特定のマザーボードを搭載した機種で確認されています。UEFIが更新されたDBXを読み込んだ直後に,システムが完全に停止してしまうといった症例です。
DBXファイルの肥大化とBIOSの限界
Haslinger氏は,原因のひとつとしてSecure Boot関連のデータベースファイル「dbxupdate.bin」の肥大化を挙げています。このファイルは,従来は約8KB程度でしたが,2025年6月の更新で24KBにまで拡大されました。
このサイズ増加が,UEFIファームウェアの処理能力や格納領域の限界を超過したことで,起動不能のトラブルを引き起こした可能性があると指摘しています。
暫定的な対処法
2025年6月19日現在,更新を回避するしか方法がありません。
症状が発生してしまった場合,メーカーからの復旧方法を待つしかない状況です。
上記のHaslinger 氏は,ジャンパーピンを用いたBIOSリカバリー手順(通常は一般に公開されていない)によって復旧を成功させたと報告していますが,できる基盤が限られる様子。
ジャンパーピンの方法はMicrosoft Learnにも情報がありました。
https://learn.microsoft.com/it-it/answers/questions/2283219/problema-pc-fujitsu-esprimo-p556-e85-dopo-aggiorna
方法1:次回更新まで様子を見る(自動更新の一時停止)
Windows Update の一時停止を行うことで、自動的に KB5060533 が再インストールされるのを防げます:
- 設定 → 更新とセキュリティ → 「更新の一時停止」で最長5週間まで停止可能
ロゴループ対処法1:Windows RE(回復環境)に入り,更新プログラムをアンインストール
ロゴループは KB5060533 の適用が原因とみられる起動不能系不具合の代表例。
最速復旧 は WinRE からの「最新の品質更新プログラムのアンインストール」。
- 電源ボタン長押し ⇒ 強制電源OFF を 3 回連続で行い、4 回目の起動で 自動修復 → 詳細オプション 画面へ。
- トラブルシューティング → 詳細オプション → 更新プログラムのアンインストール → 最新の品質更新プログラム を選択し、
KB5060533
を削除 → 再起動。- 成功すれば通常起動に復帰。
- うまくいかない場合は オフライン DISM でパッケージを強制削除。
ロゴループ対処法2:Windows RE(回復環境) → 詳細オプション → システムの復元
適用直前の復元ポイントがあれば最速。WinRE → 詳細オプション → システムの復元
今後の対応と推奨アクション
2025年6月18時点で Microsoft から正式な不具合認定はあるものの,修正パッチはありません。
以下はMicrosoftフォーラムに作成されたページです。
Windows might fail to start on some devices after installing the June 2025 Windows security update
Microsoft is aware of reports that a small subset of specific models of Windows devices fail to start after installing the June 2025 Windows security update. Some of the devices mentioned in these reports include models from Fujitsu, GIGABYTE and ThundeRobot. These reports are not necessarily related, as they include different symptoms for each of the manufacturers, including some models reporting problems on Windows 10, while others report problems on Windows 11.
Initial investigations indicate that these behaviors are linked to third-party firmware used in specific device models, which may create compatibility issues with Windows. We are working with the original equipment manufacturers (OEMs) to investigate and support their efforts for solutions for each of the affected devices.
If you are experiencing problems starting Windows after installing the latest Windows update on any of these devices, we recommend contacting your OEM for further support. We will provide further updates about these issues as they become available.
Microsoft Community
関連リンク
- Microsoft Update カタログ – KB5060533
- https://learn.microsoft.com/it-it/answers/questions/2283219/problema-pc-fujitsu-esprimo-p556-e85-dopo-aggiorna
各メーカーのリリース
- 富士通:Windows 10環境のデスクトップパソコン・PCワークステーションの一部でWindows Update後に起動できなくなる問題について
- FMV:Windows 10環境のデスクトップパソコンの一部でWindows Update後に起動できなくなる問題について
- マウスコンピュータ:Windows Update 後、一部ノートPCにてOS起動不可トラブルにつきまして
- EPSON:Windows Update 後、OSが起動しなくなる事象について
オーストリアのIT研究者であるグンナー・ハスリンガー(Gunnar Haslinger)氏のブログ記事
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